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自然エネルギー利用発電の特徴と楽しみ方(その1)



1.はじめに

太陽光や風、水の流れなどの自然エネルギーを利用して、発電することが出来ます。太陽光を利用して発電するには太陽電池、風を利用して発電するには風力発電機、水を利用して発電するには水力発電を使います。太陽光、風力、水力にはそれぞれ違いや特徴があり、それらについては各項目別に説明しますが、これら自然エネルギーを利用した発電システムにおける共通した特徴もいくつかあります。


2.自然がパートナー

自然エネルギー利用において、私たちがパートナーにするのは自然です。ところがこのパートナー、とっても気まぐれな性分で、なかなか思い通り&予想通りには振舞ってくれません。太陽の光を利用する太陽光発電では、晴天の日や曇天の日、雨や雪の日もありますので、日によって得られる発電量が異なりますし、当然ながら日射が得られない夜間は、まったく発電しません。風力発電や水力発電の場合も同様で、強い風が吹く時や、水量がたくさん得られる場合には、十分な量の発電を期待できますが、風が止んだり、水量が不足すると発電量が低下したり、まったく発電しなくなったりします。
自然エネルギーを利用した発電システムは、時間変動や日格差、季節格差などが大きいのが特徴です。


3.気まぐれなパートナーと上手に付き会う

こういった気まぐれな性分の自然がパートナーですので、私達の都合に合わせて使い勝手良く利用するには、自然と上手にお付き合いする工夫が必要です。例えば、太陽電池を利用して発電した電力を夜間の照明用電源として利用したい場合ですが、発電は昼間、利用は夜間・・・といった具合に、発電時間と利用時間に時間差が生じ、照明器具を太陽電池にそのまま接続しただけでは、上手く利用することが出来ません。

そこで、発電した電力をいったん貯めておき、利用したい時に貯めた電力を引き出して使う、という工夫が必要になります。発電した電力を貯めておくためには、バッテリー(蓄電池)を利用します。昼間のうちに太陽電池で発電した電力をバッテリーに充電(蓄電)しておき、使いたい時に蓄電された電力を引き出して使います。風力発電も同様で、風の強い日に発電した電力をいったんバッテリーに充電しておくことで、風が弱い日でもバッテリーから電力を取り出して電気を利用することが出来ます。


4.発電&蓄電&放電の3ステップ

一般論として、自然エネルギーを利用した発電システムは、発電による発電段階と、蓄電池による発電電力の蓄電段階、それから蓄電された電力を消費する放電段階の3ステップから成り立っています。
これら各段階において、適切な設置や運用が為されていることも重要ですが、これら全段階のバランスや整合性がとれていることも非常に大切で、良いシステムを構築する上での重要なポイントとなります。





自然エネルギー利用発電の特徴と楽しみ方(その2)



5.システムの要、バッテリー(蓄電池)

発電機によって発電した電力を貯めておき(蓄電・充電)、その貯めた電力を必要に応じて引き出して使うために、バッテリー(蓄電池)を用います。通常は、バッテリーとして鉛蓄電池が用いられます。これは、自動車などに使用されるカー・バッテリーと同様の形式のもので、鉛の電極と希硫酸電解液から構成されており、一般的に広く用いられているバッテリーのタイプです。
鉛蓄電池のバッテリー電圧は、通常6セル構成のDC12V仕様であるため、自動車においても、また、自然エネルギー発電システムにおいても、DC12V系や、12Vの倍数であるDC24V系やDC48V系のシステムとなります。

自動車の場合、エンジン始動後はオルタネータ(発電機)によってほぼ必要十分量の発電が得られますので、バッテリー(蓄電された電力)が必要とされるのは、エンジン始動時の瞬間(クランキング時)のみであり、負荷が大きくてオルタネータの発電量だけで賄いきれないごく短時間においてのみ、バッテリーに蓄電された電力が消費されますので、バッテリーは常にほぼ満充電された状態で運用されます。このように、充電と放電が同時進行しているようなバッテリー運用方法を「フロート利用」と呼びます。自動車のようなフロート利用においては、バッテリーが常にほぼ満充電された状態での運用が前提であるため、自動車用バッテリーに求められる性能のうち、もっとも重要視されるのは、エンジン始動時の瞬間的な大容量の放電性能(クランキング性能)のみとなります。

一方、自然エネルギー発電システムの場合、発電と放電のタイミングにズレ(時差)があるのが普通であり、例えば太陽光発電により日中発電してバッテリーに充電・蓄電しておいた電力を夜間照明用電源などとして使う場合や、晴天が続く期間に蓄電しておいた電力によって、曇天や荒天が何日間も続く期間の電力を賄う場合もあります。このように、充電と放電に時差があり、充電と放電を周期的に繰り返すバッテリー運用方法を「サイクル利用」と呼んで、自動車などのフロート利用とは区別しています。

鉛蓄電池は、放電する度合い(=放電深度)が大きいほど、受けるダメージが大きく、寿命期間が低下しますので、放電深度が大きくなるサイクル用途向けには、サイクル用途向け専用のバッテリーを用います。サイクル用途向けのバッテリーのことを「サイクル・サービス・バッテリー」や「ディープ・サイクル・バッテリー」などと呼んでいます。


6.蓄電池は「信頼のおけるディープサイクルバッテリー」を

バッテリーの負担が大きくなる自然エネルギー発電システムにおいては、信頼のおけるディープサイクルバッテリーを使用するのが一般的です。
自動車用のバッテリーも同じ鉛蓄電池ですので、同様に使えないことはありませんが、信頼のおけるディープサイクルバッテリーと比較して、以下のような多くのデメリットがあります。

1.深放電(=放電深度が大きい)してしまうと、ダメージが非常に大きい。
(→自然エネルギー発電システムでは、深放電を強いられる機会が多い。)

2.繰り返しの充放電操作によるダメージが大きい。
(→自然エネルギー発電システムは、充電と放電を繰り返すサイクル利用である。)

3.放電した状態が続くことによるダメージが大きい。
(→通常数日~数週間分の蓄電池容量を装備するため、迅速な充電ができず放電状態期間が長く続く)

4.内部抵抗が大きめのものが多く、充放電ロスや不効率な運用状態が生じやすい。
(→内部抵抗が大きいため、ロスも大きく、充電時の電圧上昇、放電時の電圧降下の程度も大きい。)

自然エネルギー発電システムに、自動車用のバッテリーを用いることは、上記1~3の欠点があるため、放電深度を浅く保ち続けるような運用方法が強いられますので、実際に利用できる有効容量が小さく、すなわち計画容量の数倍の容量の大きなバッテリーが必要になり、また、4の理由からも、せっかくの発電機の能力を活かしきれない運用となりますので、結果的に得策であるとは言えないのが実情です。
ただし、例えば非常用電源システムなどのように普段は電力をほとんど消費せず、通常は満充電状態として運用する場合や、個人的な趣味利用を目的としておりバッテリーの充電状態にあわせて使用電力量を適切に調整して運用する(できる)場合のように、バッテリーへのダメージを小さく抑えられるような場合には、安価な自動車用バッテリーも大いに活用すべきであると言えます。

また、「ディープサイクルバッテリー」と名乗るだけの性能を有していないディープサイクルバッテリーモドキも市場に何種類か出回っており、消費者の混乱を招く要因になっている実情もあります。(購入時には注意しましょう。)

バッテリーの性能や仕様、価格は、千差万別であり、目的や状況に応じて適切なバッテリーを選択することが大切であることと(正しい知識を有するプロにお任せ)、信頼のおける製品を選ぶこと(やたら安価な隣国製品は特に要注意)、信頼のおける販売者から購入すること(バッテリーは、在庫品を持たない)が、消費者としての正しく賢い選択です。

*「バッテリーは、生もの」と呼ばれています。数ヶ月間も在庫しているような店頭販売にはご注意。


自然エネルギー利用発電の特徴と楽しみ方(その3)



7.自然エネルギー発電の楽しみ方

自然エネルギー発電によって得られるのは電力ですので、その利用目的の自由度や選択肢が大きいことも自然エネルギー発電の特徴の一つと言えます。
個人の趣味やその延長線上の取り組みである場合、自然エネルギーを利用すること自体が大きな楽しみであることは言うまでもありませんが、自然エネルギーの特徴を理解して上手く利用することでより一層楽しさも大きくなると言えます。

一番先に書いたように、相手は自然であって、こちらの思い通り、期待通りにはならないことが大きな特徴であり、自然エネルギー利用の難しさでもありますが、経験を積めばある程度の予想は出来るようになります。

また、「どれくらい発電するのか?」が一番の関心事になりがちですが、「実際にどれくらい役立てて使うことが出来るのか?」という問いの方が本質的です。発電量の大きさは、相手とする自然の大きさと発電機の大きさで割と単純に決まります。しかし「発電量」と「実際のお役立ち度」には大きな差があり、ここに自然エネルギー活用の本質的な難しさや面白さがあると言っても過言ではありません。
自然エネルギー発電システムは、単なる発電機のみで構成されるものではなく、発電機や電力を蓄電しておくバッテリー、そのバッテリーに効率よく充電するための制御装置や、電力消費量に大きな差が出やすい負荷機器など、多くの機器から構成された「システム」であるからです。

一般的には、多くの無駄を省くことが、自然エネルギー発電システムの有効活用への近道となります。例えば、無駄に長い配線ケーブルを短くして使うだけでも、エネルギー利用効率が上がります。負荷として、同じ明るさの照明器具を選ぶにしても、エネルギー効率の良い機器を選択することにより、「お役立ち度」を飛躍的に向上させることが出来ます。

自然エネルギーの有効活用とは、「自然からどれだけ多くのエネルギーを得るか」ではなく、自然から得られたエネルギーを「どうやって有効に活用するか」ということを知っておかなければなりません。
この有効活用こそが、私たちのような自然エネルギー活用のプロにとって、最も重要な仕事です。

自然エネルギーの楽しみ方には、人それぞれ色々な意見や取り組み方があると思いますが、上記の「有効活用」というキーワードを念頭において考えを巡らせてみることも大きな楽しみであると言えます。

たった一枚の太陽電池、それだけでどれだけのことが出来るか、それに挑戦してみるのも一興でしょう。



8.安全面

相手は自然ですから、当然ながら安全管理には十分な配慮が必要です。太陽電池や風力発電機などの発電機類は屋外に設置されることが必然前提となりますので、台風などの強風で容易に吹き飛んだり、脱落したりしないように頑丈に設置する必要があります。

また、バッテリーそのものには家庭用コンセントのようなブレーカー(自動遮断装置)が付いていませんので、誤った運用によりショートさせると、バッテリーが爆発・炎上して原型が破壊されるか、配線が溶断するまで放電を続けますので、取り扱いには十分な注意が必要となります。
太陽電池やバッテリー、各種制御装置類等には、それぞれ個別のマニュアルが添付されておりますので、それらを熟読・理解するとともに、安易な気持ちで自然エネルギー活用に取り組むことは避け、自前の発電所を構築するくらいの責任感ある気持ちと姿勢で取り組むことが大切です。

まずは、安全第一。

不明なことや不安がある場合には、必ず事前に有識者に相談するようにしましょう。

*ご注意:有識者とは、電気がお得意な方ではありません。自然エネルギー発電を詳しく知る方です。



以下のリンク先ページにて、発電システム各種別について解説していますので、ご参照ください。

◆ 風力発電の基礎知識

◆ 太陽光発電の基礎知識

◆ ハイブリッド発電の基礎知識