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風力発電システム(その1)


1.風のエネルギーとパワー

風力発電は、風の流れを利用して風車を回し、その動力で発電機を回転させて発電します。

風は、非常に軽い空気の流れですが、時には頑丈そうな建物さえ倒壊させてしまうほどのエネルギーを有していますので、なかなかあなどれません。

風のエネルギーは、質量を有する流体であることから、運動エネルギーです。
運動エネルギーは、物体の「質量」と「速度の2乗」の積の2分の1ですので、次式が成り立ちます。
(運動エネルギーの法則)



上式に基づいて、風力発電で利用する際の風のパワーを計算するには、単位時間あたりに利用できる風の量を決めなければなりません。風の量は、風が通過する断面積と、風の速さ、すなわち風速によって求めることが出来ます。ここで言う断面積とは、風力発電機のローターが風を受ける受風面積(掃気面積)に相当します。上式における「風の質量」は、所定の断面積を単位時間あたりに通過する空気の質量のことですので、断面積[m^2]と空気密度[kg/m^3]、および風速[m/s]の積によって表されます。

*風の質量[kg]=断面積[m^2]×空気密度[kg/m^3]×風速[m/s]

よって、運動エネルギーの式の「風の質量」の項にこれら(*印)を代入すると、下式のような「風のパワー」の式が得られます。(パワーとは、単位時間あたりのエネルギー量のことです)



この式が、風力発電を知る上で最も重要な式であり、風力発電にチャレンジするのであれば、この式の意味を理解しておく必要があります。この式から分かる大切なことを以下に列記します。

(1)風のパワーは、断面積に比例する。
断面積とは、風力発電機の受風面積のことですので、ローターの掃気面積に等しいことが分かります。また受風面積は、ローター直径の2乗に比例しますので、風力発電機のローター直径が2倍になると、得られる風のパワーが4倍になる、ということが分かります。

(2)風のパワーは、空気密度に比例する。
空気密度は、その場の気圧や空気中の水分量によって変化します。例えば高所では、気圧が小さくなりますので、空気密度も小さくなります。専門的には、気圧の低い高所に風力発電システムを計画する際には、空気密度低下に伴う風車出力の減少を考慮に入れますが、一般的な場面においては、ほとんど気にしなくても良いでしょう。通常、平地における空気の密度は、おおよそ1.2[kg/m^3]です。

(3)風速の3乗に比例する。
このことは、とても重要です。「風速の3乗に比例する」とは、風速が2倍になれば風のパワーは8倍に、風速が3倍になれば風のパワーは27倍になる、ということを意味しています。反対の言い方をすれば、風速が半分の時には、風のパワーは8分の1になる、ということです。
従って、風速次第で、風のパワーが大きく変動し、すなわち風力発電機の出力もそれに応じて、大きく変動するということが理解できます。





風力発電システム(その2)


2.風力発電の効率

前項で、風のエネルギーとパワーについて説明しましたが、では実際に、風力発電システムでは、どれくらいの電気が得られるのかについて考えてみます。
風のエネルギーを最終的に電気エネルギーに変換して取り出すには、いくつかのステップがあり、そのすべての各段階においてロスが生じますので、実際に使える電気量は、風の有するエネルギーの一部になります。

まず、風のエネルギーを風力発電機のブレードによって回転の運動エネルギーに変換する効率についてですが、風の流れのもつエネルギーを100%利用しようとすると、風のもつ運動エネルギーをゼロにしてしまうことになります。これはすなわち、風力発電機によって風の流れを完全にせき止めてしまうことに他ならず、風の行き場が無くなってしまいます(つまり、風力発電機に風が一切流入できない状態です)。

また反対の見地からしますと、前項の説明の通り、風のエネルギーは、風速の3乗に比例することから、出来る限り少しでも大きな風速の風が風力発電機を通過することが望ましいことも明らかですが、このためには、出来る限り風をスムーズに風力発電機の後方(風下側)に受け流してやる必要があります。とは言え、まるっきり後方にただ流してしまったのでは、エネルギーを回収することが出来ません。

これらの単純な理屈からも、どの程度、風を後方にエネルギーを残したまま逃がしてやるのが効率的となるのか、ちょうど良いポイントがあることが想像できます。

このことについて理論的に解析したところ、「風エネルギー」を「運動エネルギー」に最も効率的に変換するには、風力発電機の後方側風速が3分の1に低下するようにした場合で、その際の最大効率は、約59.3%であることが証明されています(これを「ベッツの法則」「ベッツ限界」などと呼んでいます)。

上記の値は、理論的に導き出された理想上の限界値であり、実際の風力発電機用風車においては、20~45%程度のエネルギー変換効率となっています。
(一般に高効率型の風車は、高速回転型となりますので、騒音や寿命、安全性を犠牲にせざるを得なくなる傾向があり、また設計点から外れるような幅広い風速域で柔軟な性能を発揮する目的などからも、必ずしも最大効率だけを優先した風車デザインが採用されるわけではありません。)

その他、発電機や送電などによる電気的な効率、回転力の伝達などの機械的効率などがありますが、これらのエネルギー効率(変換効率や伝達効率)は、概ね80~95%程度と上記の風車効率と比較して、ずっと大きな値となっています。

以上から、風力発電によって得られる電気エネルギー量は、風車が受ける風エネルギーのおよそ10~35%程度であるとされています。


3.風力発電の特徴

風のエネルギーやパワーは、風速の3乗に比例することから、風速次第で風力発電機の出力も大きく変動することになります。実際の自然の風は、常に風速が変化し、また日格差や季節格差も大きいのが一般的であり、常に風速が一定の安定した風が得られるような環境はありません。従って、風力発電機の発電特性も時間変動や日格差、季節格差が非常に大きく、ピーキーな発電特性であることが特徴です。

風力発電システムを計画する上で、少しでも大きな風速が得られる場所を選定することは大変重要なことです。また、ただでさえピーキーな発電特性の風力発電ですので、風速や風向の変動が小さい安定的な風が得られる場所を選ぶことも大切で、特に風向変動が大きな場所では、風車へのダメージも飛躍的に大きくなり、寿命を縮めるだけではなく大変危険ですので、ご注意ください(後述)。




風力発電システム(その3)


4.風力発電システムの構成

風力発電システムは、いくつかの機器から構成されます。
ひとつの代表的な例として、風力発電機によって発電された電力をバッテリーに蓄電(充電)し、バッテリーの直流電源をDC-ACインバーターでAC100Vに変換して、照明器具などのような負荷を接続して活用する際の、ごく単純なシステムについてご紹介します。



上の略図のように、風力発電システムは、風力発電機本体の他、支柱やバッテリー、接続箱、レギュレータ、DC-ACインバーター、負荷機器などの機器類から構成されていることが分かります。
次に、これらの機器のそれぞれの役割と具体的な接続方法について見ていきましょう。


(1)接続箱
風力発電機とバッテリーの間に、通常は接続箱を入れます。接続箱は、単なる箱(端子台)ではなく、発電量を監視するための電流計と、風力発電機に電磁ブレーキをかけるためのブレーキスイッチ、それから安全のためのヒューズが装備されています。風力発電機からの出力を(バッテリー側から切り離して)短絡させることで、電磁ブレーキをかけることが出来ます。この原理は、発電機に無限大の負荷をかけることに相当します。ただし、台風などの強風時にブレーキをかけ続けると発電機が発熱して、焼けてしまう恐れがありますので、注意が必要です。
あると便利な接続箱は、必ずしも使用しなければならないわけではありませんが、電気工作がお得意な方であれば自作も可能ですので、なるべくご使用いただくことをお勧めいたします。

(2)バッテリー
ディープサイクルバッテリーを使用します。特に風力発電では、風が吹かない期間が長く続く場合が多く、放電気味の状態がつづくとバッテリーへのダメージが大きくなりますので、耐久性に優れた信頼のおけるディープサイクルバッテリーを採用することが賢明です。
バッテリー容量の目安としては、風力発電機の定格出力ワット数に合わせて、例えば100Wの機種であれば100Ah程度、400Wの機種であれば400Ah程度のバッテリー容量が確保されているのが理想です。少なくともこの目安の半分以上のバッテリー容量を確保することが望ましいとされています。

(3)レギュレータ
バッテリーが過充電にならないように余分な電力を投げ捨てる働きをするのがレギュレータです。ヒーターなどの投げ捨て用負荷を接続して使用します(専用の既製品には専用ヒーターが付属しています)。
充電電圧を制御するために、風力発電機とバッテリー間の接続を切断(開放)してはいけません。風力発電機が無負荷状態(フリースピン)となり、過回転によって破損してしまうからです。発電機は常に有負荷状態に保ち続けなければならず、過剰な電力は、別の投捨用負荷(ダミーロード)によって投げ捨てる必要がありますので、上記のようなレギュレーション方式が採用されています。
(*太陽光発電の充電制御方式とは異なりますので、ご注意ください。)

(4)DC-ACインバーター
バッテリーは、直流電源ですので、負荷として交流機器を使用する場合には、DC-ACインバーターによって、直流(DC)を交流(AC)に変換します。
バッテリー電圧に適合した直流用負荷を使う場合には、DC-ACインバーターは不要です。現在では、カー用品などとして、数多くの直流負荷製品が利用できますので、事前に検討しておくと良いでしょう。


風力発電システム(その4)


5.設置環境の観察

風力発電を計画する場合に何よりも重要なことですが、風力発電システムを設置するにふさわしい環境であるかどうかを事前に調べる必要があります。自然エネルギー発電に挑戦できるかどうかは、そこがどのような環境であるか次第で決まります。
設置を考えている場所の環境を事前によく観察しておくことが重要です。

◆設置環境の観察
(1)安全面
壊れない風力発電機はありません。風速60m/sの強風に耐える風力発電機であっても、ちょっとした強風時に何らかの飛来物(木の枝など)が舞い、回転中のブレードに衝突すれば、ブレードが破損してしまいます。また、不測の原因により、風力発電機の支柱が倒れたり、風力発電機そのものが脱落してしまう可能性もあります。こうしたことを事前に理解した上で、場所を選定しなければなりません。

最近の小型風力発電機は、ブレードが軽量化されており、万が一破損して周囲に飛散したとしても、ある程度の距離を飛べば、ブレードそのものの比重が軽いため、すぐに減速してヒラヒラ状態になります。従って、人(が居るような場所)から離れた位置に風力発電機を設置することが理想です。高い位置に風力発電機を設置したり、あるいは低所であれば、人が近づかないような管理された敷地内に設置するなどの工夫が必要です。

(2)公害(他人への迷惑)
風力発電機は、屋外の高い位置に設置され、強風時には高速回転する機械装置です。そよ風でサラサラと回転する風力発電機は、見ているだけでも心なごまされる存在ですが、強風時にはその様子が一変し、大きな風切音を発生したり、不快な振動を発生する場合があります。また、高い位置に設置した風力発電機は、その影を隣家に落とす場合があり、回転するブレードがチラチラとした影を作り出しますので、その影響についても配慮しなければなりません。

設置場所が、住宅地であれば、騒音(風切音)が小さい機種を選定すべきでしょうし、隣家に影を落とす可能性がある場合は、設置場所の工夫も必要になります。
また、強風時には風力発電機を停止したり、支柱を倒しておけるようにしておく(可倒式支柱)、などの対策があると、安全面から考えても、なお良いでしょう。

(3)発電環境
風力発電機の出力は、風速の3乗に比例するため、少しでも大きな風速が得られる場所に設置することにより、大きなメリットが得られます。また、風の安定性も大切で、風向がある程度一定していて、風の巻き込みが少ない場所を選びます。周囲に障害物が無く、風の通り抜けが良い場所が最適です。

風速が大きければ大きいほど発電量は飛躍的に伸びますが、風の質が悪いと色々な問題が生じます。
質の悪い風とは、風向が一定していない風、巻き込む風(ビル風など)、吹き上げ・吹き降ろしの風(ビル屋上の壁面近くに設置した場合は、質の悪い吹き上げ風になります)、とんでもない強風(局地風)などが挙げられ、どの場合も風力発電機にとっては有害な風であり、発電量が低下したり、風力発電機の寿命を著しく低下させる要因になります。


風力発電システム(その5)


6.風力発電機の機種選定

設置の目的や、設置する場所の環境、予算などの条件を判断材料として、風力発電機の機種を選定します。

◆機種選定例

(1)設置の目的に応じた機種選定例
風力発電システムを設置する目的が、具体的な発電量を必要とする電源設備であるのか、又は発電量に応じて電力使用量を調整しながら使用するためのものなのか、あるいはシンボリックな存在としての意味合いで設置するモニュメント的なものであるのか、学術研究目的なのか・・・等々、風力発電システムに取り組む動機や目的は様々です。

設置の目的が、恒久設置型の純粋な電源設備としてのものである場合には、設置環境や予算の条件が許す範囲内で、出来る限り大型の高出力・高信頼機を選択することになります。
・・・大型の独立電源用風力発電機:PROVEN風車など
・・・小・中型の独立電源用風力発電機PS3、AIR405、FM910など

設置の目的が、個人的な趣味利用であり、設置作業も含めて自力によるDIYでやり遂げようという場合には、自己の能力に応じた規模の風力発電機やパッケージ製品を選定することになります。
・・・小規模の風力発電機:エアロゼン2キット、エアロゼン2、WG913など
・・・パッケージ製品:ECO-30ZXPなど

設置の目的が、発電性能そのものには大きなこだわりが無く、シンボリックな存在としての期待が大きい場合には、微風でも良く回るような風力発電機やパワーアシスト機能付きのものがお勧めです。
・・・微風でも良く回る風力発電機:PS3、WG503など
・・・パワーアシスト機能付き:ECO-30ZXP

設置の目的が、風力発電についての学術研究である場合には、研究目的・内容・予算次第でお勧めできる風力発電機が大きく異なりますが、通常は余計な影響や干渉を無視するために、CPUや自動制御装置などを搭載していないプレーンな機種を選定します(PS3をご採用いただく場合が多いです)。

また市販製品に研究の目的を満たす該当製品が無い場合には、研究目的に沿った風力発電機を新規に設計、製作する場合もあります。

(2)設置場所の環境に応じた機種選定例
風力発電機を設置する場所が、騒音が気になる住宅街であったり、塩害が厳しい海上や沿岸であったり、暴風&氷雪の厳しい高山地帯であったり・・・と実際に色々ありますが、環境に応じた機種を選定することが必要です。

・・・騒音が小さい風力発電機:エアロゼン2、エアロゼン4、WG913、PS3など
・・・回転数制御機能付き(騒音防止):ECO-30ZXP
・・・特に塩害に強い風力発電機:エアロゼン4、アンペア100、PROVENなど
・・・強風や氷雪に強い高耐久仕様機:PROVEN、アンペア100など


◆ノースパワーより

風力発電機の機種選定は、それぞれの実物を実際に経験して比較したことが無い限り、カタログスペック上だけで判断することは難しいことですが、上記のような判断基準とお勧め機種をご参考にしていただき、ご不明な点や不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

また、弊社Webサイト上に掲載しております風力発電機につきましては、すべての機種とも実機の内部構造を把握し、弊社スタッフ自らが設置工事に携わるとともに、運転開始後の状況やトラブル発生事例、修理対応、海外からの部品調達信頼性調査などの経験を経た上で、安心してお勧めできる機種のみを掲載しております。
(一部機種につきましては、国内事情に合わせ弊社独自の改良と部品交換を実施しております。)

小型風力発電機は、世界中で毎年10機以上の新型機がデビューしておりますが、そのほとんどどれもが、数年間を待たずして消えてなくなるのが実情ですので、実績が重要視されるべき機械装置です。
一定以上の実績を有する機種のみをご紹介しております都合上、発売開始後間も無い新型機種につきましては、1~2年間ほどご案内が遅れることになりますが、上記事情をご賢察の上ご了承ください。

なおご参考までに、弊社Webサイト上に掲載しない場合の判断基準も以下に明記します。
(Web上で一般向け公開はしませんが、事情の許す範囲で個別対応として取り扱う場合はあります)

・単純に、良くない機種(すぐに消えてなくなるであろうもの)
・弊社が未経験、あるいは製品検査(実運転試験)を終えていない機種
・デビューしてまだまもなく、運転実績(フィールド実績)が不足している機種
・アフターサービス体制(修理や部品調達)が悪いメーカーの製品
以上は、主に海外製品です。

以下は、国内製品のみの事情です。
・販売ノルマを課すメーカーの製品(個別の状況に応じたベストな提案が出来なくなる恐れがあるため)
・他社製品を扱うことを許さないメーカーの製品(同上理由+万能機など無いという弊社の判断より)

*弊社Web上に掲載しております風力発電機はすべて、上記障害が無いものです。